<歯科医師が解説>母乳育児はむし歯の原因になる?
最新研究でわかった「授乳期間・完全母乳育児」と幼児期う蝕の関係
<この記事の要約>
母乳育児そのものが、子どものむし歯の原因になるわけではありません。
最新の研究では、生後6か月間の完全母乳育児を行っていた場合、2歳を超える長期授乳でもむし歯は増えていなかったことが示されています。
一方で、早い時期から母乳以外を併用したまま、長く授乳を続けるケースでは、むし歯が増えやすいこともわかってきました。
大切なのは、母乳をやめることではなく、授乳の仕方と日常のむし歯予防です。
この記事は歯科医師の加藤大明が書きました。
目次
母乳育児はむし歯の原因になりますか?
「母乳で育てると、むし歯になりやすいのでは?」
保護者の方から、よくいただく質問です。
母乳育児は、赤ちゃんの健康に多くのメリットがあり、世界保健機関(WHO)も
生後6か月間の完全母乳育児と2歳以降までの授乳継続を推奨しています。
一方で、「長く授乳するとむし歯が増える」という話を聞いたことがある方も多いかもしれません。
では、実際はどうなのでしょうか。

最新研究でわかったポイント
2025年に発表された前向き研究では(Zhao C et al., 2025.)
授乳の期間だけでなく、最初の6か月の授乳方法が重要であることが示されました。
- 授乳が 12か月を超える と、むし歯リスクはやや上昇
- 24か月を超える長期授乳では、その傾向が強まる
ただし、
- 生後6か月未満で母乳以外を始め、そのまま長期授乳を続けた場合
→ むし歯が増えやすい - 生後6か月間、完全母乳育児だった場合
→ 24か月を超えても、むし歯は増えていなかった
という結果でした。
つまり、
母乳育児そのものが問題なのではなく、早期に混合授乳となった状態で長く授乳を続けることが、むし歯リスクになりやすい
と考えられます。

夜間授乳とむし歯の関係
1歳以降は、
- 夜間授乳が増える
- 寝かしつけ後のフッ化物の利用(歯みがき)が難しくなる
といったことが起こりやすくなります。
夜は唾液の量も減るため、むし歯のリスクが高まりやすい時間帯です。
母乳育児中にできる、むし歯予防
母乳育児をやめる必要はありません。
大切なのは、予防をきちんと組み合わせることです。
- 年齢に合ったフッ化物入り歯みがき粉を使う
- 甘い飲み物・砂糖の豊富に入ったおやつの回数を減らす
- 夜の授乳は、無理のないルール作りを
まとめ
授乳の仕方と、日常のむし歯予防が大切です
母乳育児そのものが、むし歯の原因になるわけではありません。
むしろ、長期の生後6か月間の完全母乳育児は、長期授乳によるむし歯リスクを軽減する可能性があります
<参考文献>
Zhao C, Ke K, Ye K, Lv H, Tao S, Qin R, Xu X, Dou Y, Xu B, Han X, Jiang Y, Jiang T, Yuan H, Ma H, Jin G, Shen H, Hu Z, Lin Y, Hong Q, Wu H, Du J, Du J. The Associations between Breastfeeding and Early Childhood Caries: A Prospective Cohort Study. Caries Res. 2025;59(4):287-297.
乳幼児のむし歯予防の基本に関する記事はこちら→https://yoboushika.jp/school/cavity_prevention/
フッ化物に関する記事はこちら→https://yoboushika.jp/school/fluoride1/