フッ素とフッ化物の違い|正しく使えば、むし歯は83%減らせる
最近、「フッ素は危険」「フッ素入り歯みがき粉はやめた方がいい」といった話を見かけることがあります。
しかし、ここでよく混同されているのが、「フッ素」と「フッ化物」という全く違うものです。

目次
フッ素とフッ化物はまったく別のもの
- フッ素(F₂):自然界では単体で存在しない、非常に反応性の強い気体。
- フッ化物(fluoride):フッ素が他の元素と結びついた安定した化合物で、歯みがき粉やお茶、自然の水にも微量に含まれています。
つまり、私たちが日常的に使っている「フッ素入り歯みがき粉」は、正確には**「フッ化物入り歯みがき粉」**なのです。
このフッ化物が、歯の表面を強くし、むし歯菌の酸に負けない歯をつくってくれます。
「塩」と同じで、量が大切
「フッ化物は危険ではないの?」という疑問に対して、わかりやすい例があります。
それは「塩」です。
塩も、とりすぎれば体に悪いですが、生命を維持するためには欠かせないミネラルです。
フッ化物もそれと同じ。
過剰に摂取すれば体に負担をかけますが、適切な量を適切な方法で使えば、歯を守るためにとても重要な成分です。
歯みがき粉や洗口液などに含まれるフッ化物は、安全性と効果がしっかり確認された量で配合されています。
つまり、「正しく使えば安心で効果的」なのです。
研究が示した「正しい使い方」でむし歯は83%減る
海外の研究では、歯みがき粉の使い方を少し工夫するだけで、むし歯の発生を約83%減らせたという結果が出ています。
研究では、通常の歯みがきと「フッ化物をしっかり残す歯みがき法」を比較。
結果は次の通りでした:
- 通常の歯みがき:平均3.5本分の歯にむし歯発生
- 改良法(フッ化物を活かす方法):平均0.6本分のみ
フッ化物を活かす歯みがき法
- 朝食後と寝る前に磨く
- フッ化物入り歯みがき粉を歯全体に広げて2分間しっかり磨く
- 磨いた後、泡を30秒間口の中でゆすぐ
- 軽く1回だけすすぐ(何度もゆすがない)
すすぎすぎないことで、フッ化物が歯にとどまり、再石灰化(歯の修復)を助けます。
北欧歯科からのメッセージ
北欧歯科では、むし歯予防の基本を「毎日のケアの質」に置いています。
フッ化物のように正しく使えば頼もしい味方になるものも、誤った情報で不安を感じてしまう方が増えています。
私たちは、科学的な根拠に基づき、患者さんが安心して続けられる方法をお伝えしています。
フッ化物は「塩」と同じ。
とりすぎはよくないけれど、適正な利用こそが健康に欠かせないということを、どうか覚えておいてください。
まとめ:フッ化物は、歯を守る“ミネラル”
- フッ素とフッ化物は別物
- フッ化物は正しい量で使えば安全で効果的
- すすぎ方を工夫するだけで、むし歯予防効果は約83%にアップ
むし歯やむし歯の予防で不安や質問がある方はどうぞ遠慮なくお尋ねください。
[参考文献]Al Mulla AH, Kharsa SA, Birkhed D. Modified fluoride toothpaste technique reduces caries in orthodontic patients: A longitudinal, randomized clinical trial. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2010 Sep;138(3):285-91.→https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1532338211000789