根管治療(神経の治療)後の歯を長持ちさせるカギは「クラウン(被せ物)」だった|146万本の歯を8年間追跡した研究より

目次
はじめに
「神経を取った歯はもろくなる」とよく言われます。
実際に、根管治療(歯の神経を取り除く治療)を行った後に、どのような修復を行うかが、その歯の寿命を大きく左右します。
今回は、全米50州・約112万人・146万本の歯を対象に8年間追跡した大規模研究から、
「クラウン(被せ物)の有無」が根管治療後の歯の生存率にどのように影響するのかを紹介します。
研究概要
- 対象患者数:1,126,288名
- 対象歯数:1,462,936本
- 追跡期間:8年間
- 実施地域:アメリカ全50州
- 治療者:一般歯科医・根管治療専門医(エンドドンティスト)
- データ提供:Delta Dental Insurance(加入者約1,400万人)
結果―抜歯になった歯の85%に「被せ物がなかった」
研究によると、根管治療を受けた歯の97%は8年後も残存していました。
一方で、残りの3%では再治療・外科的処置・抜歯といった問題が発生しており、その多くは治療後3年以内に起こっていました。
さらに、抜歯となった歯を分析したところ、
なんと85%の歯には被せ物がされていなかったことが明らかになりました。
つまり、根管治療そのものの問題ではなく、治療後に歯を補強しなかったことが破折や再感染の原因になっていると考えられます。
すべての歯種で、被せ物をしている歯の方が有意に良好な予後を示しました(p<0.001)。
被せ物の役割―「治療の仕上げ」ではなく「予後の決め手」
根管治療を終えた歯は、神経を失うことで水分量が減り、物理的に割れやすくなるといわれています。
そのため、上からしっかりと覆うクラウン(被せ物)が、
「力の分散」と「密閉性」の両面で非常に重要です。
クラウンを装着することで、次のような効果が得られます:
- 噛む力から歯を守り、破折を防ぐ
- 細菌の再侵入を防ぎ、再感染を予防する
- 長期的な安定性を保つ
一方、仮封や詰め物のまま放置した場合は、
わずかな隙間からの再感染や歯の破折によって、数年後に再治療や抜歯が必要になるケースが少なくありません。
北欧歯科からのアドバイス
「歯は削らないほうがいい」と考える北欧歯科ですが、
根管治療後の歯の補強だけは“例外的に積極的に行うべき治療”だと考えています。
なぜなら、被せ物によって治療の成功率と歯の寿命が大きく変わるからです。
当院では、根管治療を「歯を残すための第一歩」と捉えています。
痛みがなくなった後こそ、被せ物でしっかり補強することが歯の寿命を決めるのです。
まとめ
- 抜歯になった歯の85%は被せ物がされていなかった
- クラウン(被せ物)は、歯を長持ちさせる最重要ポイント
- 「根管治療=完治」ではなく、「クラウンを被せて初めて完了」
歯を長く残すためには、治療後の補強と定期管理が欠かせません。
根管治療後の歯の予後について不安なことがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
[参考文献]Endodontic treatment outcomes in a large patient population in the USA: an epidemiological study. J Endod. 2004 Dec;30(12):846-50.→https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15564861/